大学のモンスター・ペアレンツ
三浦展『下流大学が日本を滅ぼす!:ひよわな”お客様”世代の増殖』KKベストセラーズ、2008年 を読む
三浦氏曰く、大学全入時代の今日、「バカ学生」が大学で最後の磨きをかけられて大量生産されている、とのこと。「バカ」とは、いわゆる学力=偏差値だけの問題ではなく、ひよわ(精神力だけでなく体力も)、自己愛が強い(自己チュー!)なことを指す。非常勤講師の経験もある(授業評価でさんざんな目にあった?)著者の苦言集のような印象だ。
大学教員や採用する企業側、また当人である学生の「証言」もたくさん紹介されており、現状はまさにその通り!と(必ずしもすべてではないが)共感できる。本書の新聞広告には「泡を吹いて倒れる学生」「卒論を教授にタイピング」等々の見出しがあり、眉唾物と思った人がいるのではないだろうか。だけど一介の大学講師の私も見聞きし、体験済みだ。テストやレポートを返したり、面接をしたりすると泣いてしまう学生には「慣れた」が、過呼吸になって倒れてしまう時も。泣きじゃくって息ができなくなる子どもの姿と重なる。貧血気味の学生(低血圧なので朝起きられない、と遅刻の正当性を訴える.....)、いつも体が小刻みに震えている学生も珍しくなくなった。
そして保護者について.....。いわゆる「モンスター・ペアレンツ」は本当に増えている。小、中学校では保護者会やPTAがあり、近所なので親同士が仲良くなって不満を言い合う(?)機会があると思うが、大学では不満が直接やって来る。大学事務がしっかりしていないところは応対を教員に任せる(たらい回しにする)のでたいへんだ。三浦氏が指摘するように、消費者意識の強い保護者が、学校並み、さらにファミレスや回転寿司なみのサービスを要求するのである。所得や地方の格差の問題も、たしかにあると思う。
これまでの体験で特に困った(困っている)のは、次のようなものだ。
○就職や編入学のために「A」を付けるよう、クレームを言う。電話の時も、直接の訪問もある。最近は成績表が保護者宛に郵送されているので、卒業前に単位不足にびっくり、ということは無くなったのは良かったが.....。
○施設実習で、保護者が「関係者」にはたらきかけて希望の実習先を確保しようとした。現場の職員が困惑していると偶然耳にしたので、学生本人に「何が問題か」を話し、施設にはあわててお詫びに行った。
○通学距離が遠いので「遅刻してもよいか」と聞かれる。何線に乗って何線に乗り換えて、乗り換えが混んでいてたいへんで.....と細かく説明される。保護者会の後にこうした相談(?)が多い。
○施設見学を土・日に設定した。すると休みがちな学生の保護者が大学事務に直接電話し(最初は「学長に話したい」と言ったらしい)、土日は休ませてほしい、出席をとらないでほしい、と要求した。
○直接相談に見えた保護者に、書類に封筒を添え、「私宛に返送してください」とお願いした。すると、「○○(私の名字)宛」とだけ書かれた封筒が、「宛先不明」として郵便局から届いた。大学の封筒だったので(所在地が印刷してある)良かったというべきか.....。
○休みがちな学生の保護者に自宅の電話番号を教えた。週1回ほど夜に電話があり、学生の出席状況を毎日知らせてほしい、と頼まれたり、「子どもが話を聞いてくれない」「仕事を辞めた方がよいか」といった家庭の問題を話したりした。ほとんど聞くだけだったが、しばらくして電話はかかってこなくなった(ターゲットが別に移った?)。
○私の担当科目が「教育」に関するものであることを知り、保護者が自らの「教育論」をとうとうと話し、「どう思われます?」と意見を求められた。
何だか愚痴になってしまうが、保護者への対応は、実際の時間から見ても年々無視できない状態になってきているのは事実だ。
三浦氏には一つだけ反論。大学教員は「好きなことだけ」やっていて、社会人としての能力がないと指摘されているが、マンモス大学ならともかく、小規模で、資格や免許に頼らざるを得ない大学では、むしろサラリーマンのような先生が目立つ。企業の経営者や政治家のような先生も多いと思う。授業でたくさんの分野を担当することを余儀なくされ、さらに学生や保護者に対応し、文科省や厚労省といったお役所と折衝、といった器量と体力も求められる。
時代の要請に応える必要は耳の痛いほど(?)理解しているつもりだが、大学はこれからどうなるのだろう.....。
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