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2008年10月の記事

「家庭教育」フィーバー?!

本田由紀『「家庭教育」の隘路:子育てに強迫される母親たち」勁草書房、2008年 を読む

本田さんは、「ニート」や女性、若者の仕事や生活の問題を、社会学のアプローチで、明晰に、そして一般人(?)の視点で見て、わかりやすく書ける人だと思う。「家庭教育」という絶対的善いことに向けて、政策的かつ心理的・盲目的に追い立てられる今日の母親像を、タイトルの「隘路」という怪しい言葉で、最初から見事に示してみせる。「隘路」という言葉は、「哀」にも、「アイロニー」にも見えてきて、母親の哀しさを超えて、「格差」が広がって教育環境・教育的言説そのものの行き詰まりを連想させる。

圧巻は母親インタビューである。おそらく、「母親」でもある本田さんだからこそ、世間話のように引き出せた「お母さんたち」のことばは、本当にリアルだ。そして、話し方や言葉、話題の端々から、本田氏の指摘する「連続的なグラデーションの形」をとった格差が歴然と見えてくる。母親の学歴により、そしてそれは経済的資源はもとより文化的資源につながり、それぞれの家庭教育のベクトルを規定している。

その他、内閣府の「青少年の社会的自立に関する意識調査」を用いた分析が行われている。これは、15〜29歳の子どもと、それぞれの父母に対する調査が同時に行われており、興味深い。「のびのび」と「きっちり」の子育てのどちらが、子どもにどのように影響を与えるのか(成績や最終学歴!)、社会階層から連続した道筋が見えてくる。

本田氏の指摘と同じく、公的な学校教育において充分な学力保証ができるよう、また学校外教育も保証されるよう、政策的な配慮が今こそ必要だと思う。ボランティアや地域住民.....といった不確定な善意を期待するのでなく、財政支出を惜しまずに。

ちょうど、10月21日の朝日新聞朝刊に、「『認定子ども園』整備進まず」、「『学童クラブ』じわり改善へ」という2つの記事が並べて載っていた。前者は、幼稚園と保育園を合わせた認定子ども園が目標値の1割にとどまっていること、後者は、放課後児童クラブ(学童保育)の全国1万3千人の待機児童数が昨年より900人減った、という調査結果である。いずれも、公的な保育が充分に進まない現状のあらわれだと思う。「私費」で幼稚園+早期教育+.....と進む層と、公教育・保育が充分に受けられない層と「見える格差」が広がり、中間ゾーンの(父親でなく)母親は限りなく追いつめられるのだ。

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幼児の英語学習

「英語で保育:幼いうちから無理なく習得」『日本経済新聞』朝刊、2008年10月11日、35頁 を読む

小学校での「児童英語」は、低学年にも広がってきている。そして、就学前の子どもにも.....。もとは、外国籍の幼児が対象の「認可外保育園」であるプリスクールは、日本の子どもたちの英語の早期学習の場として人気上昇中のようだ。

この記事ではまず、東京都目黒のアンジェリカ保育園が紹介されている。アメリカ出身の先生が「ハウ・イズ・ザ・ウェザー?」と10人の4歳児に問いかけると、「レイニー!」「クラウディ!」「あめ!」などの答えが次々に返ってくる様子だ。他に音楽に合わせてダンスを踊ったり、絵本を読み聞かせたり、といった「英語保育」が、毎日30分間行われるという。ここでは短時間の英語保育が、何とゼロ歳児から可能なようだ。

また、オーストラリアの保育所が神奈川県大和市に開設した「123ラーニングセンタース中央林間」では、3歳児以上児向けの「バイリンガルプログラム」(4時間)があるそうだ。「保育の中で無理なく英語に触れられる」という母親の話が紹介されている。

そして、記事のまとめとして「英語保育を受ける3鉄則」が具体的だ。1は「目的を明確に」、2は「見学しよう」、3は「継続こそ力」。外国籍の子どもや、渡航を控えた家庭で「やむを得ず」通うのではなく、「日本人」の親が良質な英語教育の場を求めて選ぶ、贅沢な施設となっているのだ。

費用もやはり「贅沢」だ。この記事で紹介のある4施設では、いずれも週5日で、月額4万5000円から7万2000円。他にも入学金や教材費などもある。しかも忘れてはならないのは、短時間「保育」であるところだ。「お手伝いさん」でもいない限り、母親にとってはお弁当づくりの後、送り、あっという間に迎えに行く毎日だ。ママ仲間でランチやお茶、といった機会も増えるだろう。

その他、プリスクールの現状については、『英語キッズの育て方』<アエラ臨時増刊>2007年3月15日号 などでも紹介がある。こうした雑誌や新聞記事を見ていると、私立小学校から英会話スクール、英語教材、通信講座、さらには「親子留学」まで、親の「投資」の過熱ぶりを感じる。まさに親の意欲と経済力が、新しい市場を生み出しているのだ。

文部科学省による統計を見ると、中学校で英語を教えられる教員免許を持っている先生が小学校で教える「専科担任」は、平成14年度の導入以来4年間で242人にもなった。しかし全国で2万2、3千ほどある小学校の数を考えると、やはり少ない。

特に公立の小学校では、担任の先生が、非常勤のネイティブの先生などと協力して授業をしているケースが多いと思う。「児童英語」を重視する私立なぞと比べると、授業数も、もしかしたらレベルも、かなり異なるのではないだろうか。そして、そうした「差」は、すでに就学前から根深く広がっているのだ。

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先生の仕事マニュアル

宮崎猛・小泉博明監修『新任教師の仕事』<教育技術MOOK>小学館、2007年 を読む

サブタイトルは「中学校・高校版 新任・新人教師必携マニュアル」。(1)授業を創る、(2)一人ひとりと向き合う、(3)校務分掌を理解しよう、(4)保護者への対応、(5)今日から社会人、そして教育公務員 の5分野。A4版で見開き1項目のQ&A形式となっている。「基本チェック」ページも。

内容も簡潔明瞭、イラストもレイアウトもすっきりで読みやすい。項目は、例えば(2)なら「Q.中高生は、どんなふうに成長するの?」「A.自我の目覚めとともに.....青年期とは.....」といった概論風も、「Q.ほめ方のポイントは?」「A. Point1 子どもの行為を見逃さない.....「今日は上手ね」という言い方にならないように気をつけましょう」といった細かさもあり、頼りがいがある。

CD-ROM「すぐに役立つテンプレート集」もついていて、行事予定表などの配付資料、係活動など、学級経営で使えるフォームがうれしい。Wordだけでなく、一太郎版もついているのもうれしい。

教員養成課程の学生に薦めているが、最近、大学教員としての仕事(心構え?)にも、そのまま使えるように思える。授業で生徒の気持ちをひきつけるアイディア、不登校の生徒や「いじめ」への対応、その他「Q.さまざまな生徒への対応は?」「Q.いろいろなタイプの保護者への対応の仕方は?」など.....。

「授業」「学校・大学の仕事」といった原点に立ち返るためにも、今日の学生や保護者に立ち向かう(?)意味でも、即戦力の一冊だと思う。秋学期が始まり、さまざまな学生に関わる中で強く思う.....。

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「危険なインターネット」シミュレーション@ニフティ

@ニフティ:インターネット体験ドリル(2008年9月版)

子どもが携帯やパソコンで、出会い系サイトやオークションまがいの詐欺やら犯罪に巻き込まれて.....という悲惨な事件が後を絶たないが、老舗プロバイダー「@ニフティ」が子ども用の啓発サイトを公開している。個人情報(氏名、電話など)を気軽に書いてしまったらどんなことになるか、疑似体験ができる、というもの。

2通りあって、一つは「芸能人のサイン会招待!」という展開。好きな芸能人の名前を書くと、その名前が入った「サイン会にご招待します! ここへ何時に来てください」という案内が出る。そして場面は、会場の薄暗い「公園」に移る.....。車のドアが閉まるバン!という音が突然でびっくり。イラストはかわいいのですが、小学4、5年生くらいだと、気持ちが「中」に入ってしまって泣いてしまう子も出そう。

もう1通りは「抽選に当たってお小遣い!」というもの。一部、体験の展開と、確認ドリルとが合わない?ところがあるが、これも最後に突然迫真の音声が。要するに、お金払え!という電話が直接かかってくる、という展開です。

子どもに実際やってもらって、それから「ドリル」で復習ができる、という構成。小学高学年や中学1年くらいまで楽しく使えそうだ。実際に名前を書き込んだり、画面の携帯電話を操作しながら話を進めたりするのでドキドキできる。私もぜひ授業で紹介してみたいと思う。

20年ほど前、「出会い系」が電話だった頃、普通の女子グループが「おじさん」を呼び出し、「女性」を待っている様子を観察する(絶対接触はしない)という、「危険なゲーム」をしていた時代があった。おそらく今、こわいのは、携帯電話という一人一人のツールのため、グループで行動していれば防げる(初歩的な!)犯罪に巻き込まれるケースだろう。

また、ネットのやり取りがいよいよ頻繁になる中学生や高校生対象に、本格的なシミュレーション、期待しています。いわゆる「学校裏サイト」まで踏み込んでもらえるとさらにうれしいですが.....。パソコンと携帯電話の利用の住み分けが言われるが、特に「ケータイ」という日本独自の発展をしたツールについて、大人はどこまで「踏み込める」のだろうか。

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秋学期の授業に向けて

(1)教師養成研究会『教育原理:教育の目的・方法・制度』学芸図書株式会社、1961年、(2)上野千鶴子『サヨナラ、学校化社会』太郎次郎社、2002年 を読む

大学の秋学期の授業が始まった。教育原理や教育方法などの授業を担当しているが、この時期になるとつい手にするのが(1)だ。今、手元にあるのは何と九訂版。40年以上も現役のテキストなのである。

数分野がまとまった濃さ、教員採用試験にも対応できそうな(?)懇切丁寧な脚注がすごい。残念ながら授業では読みこなせず、別のテキストを使っているが、私にとっては常に原点に戻れるようなバイブル的存在だ。

それから(2)の第5章「授業で生存戦略教えます」。今や東大教授の上野先生が「偏差値三流、四流大学」で編み出した方法は、学生だけでなく、大学教員にとっても(サバイバルの!)ヒントでいっぱいだ。

「社会調査法」という2コマ分、3時間を使った授業で、KJ法、インタビューで基礎トレーニングをした後、自由研究に取り組む。生データを集め、編集する「情報生産のノウハウ」を伝える授業なのである。

学生の「ぼくは頭をもっていたけど、使い方を知らへんかっただけや」という台詞が絶妙。実は私も、「先生の授業は難しいけど好き」と言われると素直にうれしい。騙されているだけかもしれないが(?)、新学期の授業も気を引き締めて臨みたいと思う。

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